書類やスマホなどで「じゅうぶん」という言葉を使う時、「充分」と「十分」のどちらを使っていますか?
「十分」はものごとが1~10あるとしたら、10に至っているので、その対象のものごとが最終地点まで到達しているという意味で使います。
「充分」は「充たす」の文字が含まれていますので、「充たしている=満たしている」の意味になり、最終地点まで到達している意味になります。
「十分」「充分」も最終地点に到達していますよね。ですが、違いがあります。
「充分」と「十分」の違い、どっちを使えばいいのか、例文も紹介します。
「充分」の意味と使い方【例文あり】
「充分」の意味を説明します。
そのものごとに対して、あなたが感じる満足感が頂点にあるときに「充分」と言います。
デジタル的な数値では表現できない感覚的な満足度が高いときに使います。
また、「充実」している状況であるときで、現実に満足している状況であるときも当てはまります。
数値で計測できない感覚的な満足度を表現するときに使用する用語なのです。
「充分」の使用例を紹介します。
- お酌をすすめられた時
「もう一杯いかがでしょうか?」のお誘いに対して「いえ、もう充分にいただきました」と返答します。
- お茶会(茶道)の席
ご亭主から「もう一服いかがでしょうか?」の気遣いに対して、「ありがとうございます。充分に頂戴いたしました」とお返しをします。
- 結婚して3年目のご夫婦に「結婚されて3年経ちますが、いかがですか?」の問いに、「今でも充分に幸せです」と今でもラブラブです、と答えるときに使います。
「充分」は、第三者から見てもわかりません。その対象の方が感覚的に満足されていれば「充分」なのです。「充分」は主観的な感覚で使われます。
「十分」の意味と使い方【例文あり】
「十分」の意味を説明します。
そのものごとに対して、第三者が見て満足感が頂点にあると察したときを「十分」と言います。
その方を客観的に捉えることで、計数値で計測できる満足度が高位であるときを言います。
また、「十点満点中十点」を取得している状況であるときで、数値的に満足している状況であるときに当てはまります。
数値で計測できる客観的な満足状況を表現するときに使用する用語です。
「十分」の使用例を説明します。
- 内の会議やお取引先様との会議を目前にして
「本日の資料の部数は足りておりますでしょうか?」と会議主催者の問いに対して「はい。十分にございます」と返します。
- 技大会で上位の成績を修めた方に
「本日は優勝おめでとうございます」の祝意(しゅくい)に対して「本日は毎日の練習の成果を十分発揮することができました」と感謝の気持ちを返します。
③残業で遅くなり電車で帰れず社用車で帰宅するとき
「今日は月次締め切り業務で遅くなります。社用車で帰宅します」と報告を受けた管理職は「ご苦労さま。深夜に車を運転するときは、十分に注意をして下さい」と労いを返します。
「十分」は、第三者から見て客観的にわかる状況です。数値的に計測が可能で、誰が見ても満足をしている状況と判断できるときに使用する用語です。
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「充分」と「十分」の違いと使い分け
「充分」「十分」の違いを説明します。
「じゅうぶん」を辞書で調べてみると「十分・充分」と説明されています。
「十分」「充分」は同意語(どういご=同じ意味)なのです。「十分・充分」の意味は「条件を充たしている」「不足がない様子」「満足できる様子」を示しています。
しかし、「充たす」の文字を使用した「充分」と、数字の「十」を使用した「十分」には特別な違いがあります。
「十分」は数字の「十」を使用しています。
10点満点で1~9が不足状態にあります。「十」に満たないので「不十分」になります。10点で「十分」になります。数値的に計測できる満点を「十分」と言います。
「充分」は数値的な計測ができません。
その対象の方が満点である感じたときに「充分」になります。「充分」は感覚的な満足度を表す用語です。
「じゅうぶん」は本来「十分」と表記します。「充分」はあて字とされています。
しかし、あて字の「充分」を使用してもかまいません。
辞書を引くと「十分・充分」と表記されていますので使用の問題はありません。
「充分」と「十分」公用文ではどっちを使う?
当て字の「充分」でも使用できると書きましたが、公文書にはあて字の「充分」は使用できないため、公用文では「十分」を使用します。
文部科学省が定める教育漢字は「十分」としています。そのため、官公庁が「じゅうぶん」を使う時、「十分」と記載します。
「充分」はあて字扱いになっていますので、教科書・公文書は「十分」と記載することが一般的です。
文部科学省の外局の文化庁は「じゅうぶん」を漢字で使用する際は「十分」を使用するべきであると明記しています。
文化庁による「十分」と「充分」についての言及の全文を引用します。
本来は「十分」であって、「充分」はあて字である。
また、「十」のほうが字画も少なく、教育漢字でもあり、「充」はそうでないことなどからも、漢字を使うとしたら「十分」を採るべきであろう。
しかしながら、最近では、この語はかな書きにする傾向がある。
公用文や「文部省刊行物表記の基準」などでは、かな書きを採り、「十分」と書くことを許容している。
出典:文化庁「語形の「ゆれ」の問題漢字表記の「ゆれ」について(報告)より引用
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/05/tosin04/index.html
最後に
「充分」「十分」は、主観的・客観的の観点で使用することと、官公庁は「十分」を使用することが判りました。
「充分」は本人の感覚で使用します。
「十分」は客観的に使用し数値的な計測ができ、第三者が認識できるときです。
どちらを使用して良いか迷った場合は、当て字の「充分」ではなく、文部科学省が定めている「十分」を使用しましょう。