飲食店の和食系のそば屋・てんぷら屋・うなぎ屋さんに行くと、メニューに『松竹梅』とありますが、「松竹梅の違いはなに?」と思いますよね?料金が違うので、一番安い『梅』を頼むと恥ずかしい・・・と選ぶのも迷います。『松竹梅』の意味、どれを選べば一番おトクなのかについて紹介していきますね。
松竹梅の意味
『松竹梅』は文字通りに「松」「竹」「梅」を連続して「しょうちくばい」と読みますが、「松」「竹」は秋季・冬季でも落葉がなく緑を保持しています。「梅」は冬季から春季に至る過程で最も早く花を咲かせることから、中国の「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」から日本に伝わりました。
国内では「松」「竹」「梅」ともに寒さに耐えることから、めでたいものとして慶事・祝いことに使用されます。
『松竹梅』にはおめでたい意味がありますので、CMにも使われていたことがあります。
昭和の時代、石原裕次郎さんや渡哲也さん・吉永小百合さんがテレビコマーシャルで放映されていた宝酒造の「松竹梅」は「喜びの酒」と言われています。
松竹梅が日本に伝わった時代
『松竹梅』は、奈良時代に日本に伝わってから、各時代によって取り上げられ、現在に至ります。現在までの経緯を紹介していきますね。
奈良時代
『松竹梅』は奈良時代(西暦710年~794年)に日本に伝来されました。その頃から「松竹梅」は慶事・新年の飾り物と扱われました。今から1,300年前から継承されています。
室町時代
その後、室町時代(西暦1336年~1573年)に入り、謡曲(ようきょく=能の台本で、それを声に出してうたうこと)に取り入れられ慶事のお席で謡われるようになりました。能の舞台の後ろにある板を「鏡板」と言い、松の絵が描かれています。
江戸時代
江戸時代(西暦1603年~1867年)に入ると、長唄(ながうた=三味線を伴奏楽器とする歌曲)や河東節(かとうぶし=江戸浄瑠璃の一種)などは、祝儀曲(しゅうぎきょく=三味線音楽や箏曲の楽曲分類名称のこと)として数多く作曲され、全国に広まりました。強い生命力を持つ「松」に、成長力が早い「竹」を添えて新年を飾るようになりました。
江戸時代に流行った松竹梅の語呂合わせ
また、江戸時代の商人・町民は洒落(しゃれ)を好み、うなぎ屋で蒲焼を注文すると長い間待たされること
待つだけうめえ=松竹梅え
と言っていました。
この時代から語呂合わせがあったんですね^^
江戸時代にうなぎ屋は注文を受けてからうなぎを割き、焼き蒸し焼きをするので大変時間がかかったようです。江戸時代からうなぎの蒲焼はご馳走で、慶事などで食べられていたようです。
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なぜ松・竹・梅の順番なの?意味はあるの?
『松竹梅』はどうして1番目に「松」、2番目に「竹」、3番目に「梅」の順番なのでしょうか?「松竹梅」の言葉は一般的に使用しています。とくに違和感がありませんが、なぜ「松」「竹」「梅」の順番になった説明をしていきます。
元来、「松」は奈良時代に中国から慶事の飾りものとして伝来しました。その後、室町時代に「竹」が慶事の飾りものに加わり、江戸時代に「梅」が慶事の飾りものに加わったとされ、現在に至る「松竹梅」になったと言われています。
江戸時代初期は「松」「竹」「梅」の順番に意味はなく、慶事の飾りもの「松」「竹」「梅」があることでめでたいものとされました。呼び方も決まりは無く「ばいしょうちく」と言われていました。
■松竹梅の順番になった理由1
しかし江戸時代の商人・町人は洒落や格好を気にすることから「ばいしょうちょく」では語呂が悪いことから「しょうちくばい」になったと言われています。
■松竹梅の順番になった理由2
「松」「竹」「梅」の順番は、前記の語呂合わせの要因の他に、慶事の飾りものに使用され始めた時代順であるとも言われています。
「松」は奈良時代、「竹」は室町時代、「梅」は江戸時代ですので、時代順に「松竹梅」となったようです。
松竹梅がランキングになったのはいつ?
江戸時代中期頃から、食事処・旅籠(はたご=ホテル)では、食事のランク・宿泊する部屋のランクを「松」「竹」「梅」とクラス分けをしていました。
食事であれば、「特上」=「松」、「上」=「竹」、「並」=「梅」ランクと表現していました。旅籠(はたご)であれば、「スウィートルーム」=「松」、「デラックスルーム」=「竹」、「スタンダードルーム」=「並」と表現していました。
松が特上になった理由
「松」は「百木の王」と呼ばれる景観が素晴らしい樹木であるとともに、常緑・長寿・多いく成長することから樹木の王様の風格があります。東京都中央区の浜離宮庭園「三百年の松」、静岡市三保の「羽衣の松」は立派で風格がありますよね。そのため「松」は最上位ランクになりました。
最近では、外国人に盆栽が人気ですが、盆栽は「松」がベースとなっていて、とても美しいということで、魅了される外国人が増えています。
梅は江戸っ子が使い出した
食事処・旅籠でのオーダーするとき、一般的な「並」を注文するときは、周りの目線を気にする気質の江戸っ子は「並」と言う言葉を嫌がったため「松竹梅」の「梅」になったと言われています。植物に例えることで綺麗で粋(いき)に聞こえることから広まったようです。
松竹梅に迷ったら○を選ぶ
松竹梅のどれにしようか迷った時は、迷わず『梅』を選びましょう。梅は一番下だから、恥ずかしい・・・などと思うことはありません(キッパリ)。
著者は、メニュー開発などの食関連に携わっていたことがあり、その際に食関連のプロから「梅を選びましょう」と教わりました。
『梅』を選ぶと恥ずかしいから『竹』を注文するお客さんが多いので、『竹』は価格に比べて控え目にしている、つまりお客にとって一番コスパを悪く設定しているということなんです。
お客の心理をついた価格設定になっているわけです。
お店としては利益をあげることが目的ですから、松竹梅をとおして損をしないように価格設定しているのです。ですので、迷ったら『梅』を選ぶことです。
松竹梅の続きはあるの?
「松竹梅」のランク付けに続きがあるのでしょうか?
「松」の上のランクや「梅」の下のランクはありません。「松竹梅」を英語表記すると「premium」「special」「standard」になります。「松竹梅」同様に「premium」の上のランクは無く、「standard」の下のランクもありません。
■松竹梅以外のランク付け
世界の方々は品物・サービスのクラスを3分類することを好むようです。オリンピックや競技会で成績上位者を1位2位3位と言い「金銀銅」のメダルをおくります。戦前の学校の成績は「甲乙丙=良い・普通・悪い」と表しました。
また、歌謡曲のヒットする単位を「ギガ・メガ・シングル」とランク分けします。飛行機の座席は、ファーストクラス・ビジネスクラス・エコノミークラスとランク分けします。日本酒は、特撰・上撰・佳撰とランク分けします。以上から見ても「松竹梅」にその上、その下のランク分けはありません。
「松竹梅」は正月を飾り付けるアイテムで欠かせない植物です。「松」は一年中葉を落とさずに永遠の命を象徴しています。「竹」は真っ直ぐに成長する生命力の強さを表しています。「梅」は明けた年に最初に咲く花で、昔から日本人に好まれ、実も美味しくいただきます。
そのため、「松竹梅」を使用したアイテムは正月に多く使用されます。例えば「門松」が該当します。「竹」を「松」で包み込み「梅」を飾り付けて、門・玄関先に飾り付けます。
最後に
「松竹梅」は祝い事・おめでたいなどの慶事で使用され、「鶴亀」と同様に縁起の良いアイテムとされています。
「松竹梅」は「特上・上・並」を植物にたとえ、洒落を効かせた綺麗な表現でランク付けをした言葉で使用されています。現在でも和食系の寿司屋の寿司のコース、天ぷら屋の定食コース、うなぎ屋の定食コースは「特上・上・並」を「松竹梅」で使い分けをしています。
「金銀銅」「premium・special・standard」と3分類のランク分けが世界中に浸透しています。「上中下」では味気ない言葉ですが、「松竹梅」を使用すると洒落が効いたランク分けの言葉に変化することが不思議です。
日本では、メニューで松竹梅が使われることが多いですが、「竹」「梅」を選択して貧祖・粗末・不味い食事が提供されることではありませんので、心配はありません。
また、メニュー開発などを手掛けている食のプロによると、真ん中の『竹』を注文する人が多いので、コスパの面では一番悪くなるため、迷ったときは『梅』を選んだ方がいいとのことでした。
次回から堂々と『梅』を注文してくださいね^^